いつになく穏やかな過ごし方で過ごすプシュカルの初日、
ふと、よくあるやりとりに出くわした。
ホーリーレイクのガートを覗き込んでいると、
おっさんがワケ知り顔で話しかけて来るんだ。
「この湖はね、聖なる湖でね、はじめにお祈りを捧げるんだよ。」
まぁよくある話ではあるけれど、
前回も、これまでも、不信心で不心得な僕である。
その後起こるであろう展開を想像しながらも、
何だか言われるがままに一緒にガートを下り、
念仏的なご唱和を一緒に口ずさみながら花を手向けたのだ。
ヒンディな神々のお名前に続き、
マイグランマから、両親、兄弟、妻、先祖代々に至るまで、
導かれるままにその名を口ずさんでいると、
最後に彼が言うのである。
「で、いくら払うの?」
なかなかのストレートな物言いに、
ビックリするところであるけれど、
「じゃ、100ルピーで。」
「いやいや、先祖代々、死者の分も祈ったんだからさ、
死者の食事代も込みでほら、その1000ルピーでいいよ!」
流石に1000ルピーはいくら何でも!と思いながらも、
不意に家族一同のお名前を唱和し、健康祈願をした手前、
普段からの寺社仏閣での不信心なお賽銭具合や、
数多くの物乞いの皆さまへの不遜な態度の数々、
毎度ながらに皆様へのご迷惑のお掛けっぷりを恥じたのか、
腹切ったつもりで500ルピーを今回の落としどころとしたのである。
ちなみにこの額は目の前のホテル代と同額である。
ソレを横目で眺めていたホテルのおっちゃんにも、
「君、いくら払ったの?馬鹿だねー!今度から気をつけな。」
だなんて言われながらしばらくのあいだ考えていたんだ。
「コレは騙されたわけではなく、合意の上の喜捨である。」
やはり僕は不信心な人間ではあるが、
人様の聖地に足を踏み込んでおいて、
たまの、曲がりなりの祈祷をしておいて賽銭ケチってどうすんの!?
まぁ自分自身の勝手な納得への対価でもあるんだけどさ、
その後しばらくのあいだ、
宗教や信仰、喜捨や自身のあり方などについて、
悶々と想いを馳せた聖地巡礼となったのであるよ。
【参考】
第15回 お賽銭|信州善光寺法話
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